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2021年NHK大河ドラマ『青天を衝け』や新一万円札の肖像に採用され、注目を集めている「渋沢栄一」ですが、実は今まで一般的な知名度は高くありませんでした。2024年2月現在までにも、数多くの関連本が出版され混乱しそうになります。
… そこで、この状況下で「いったいどこから手を付けて良いんだろう?」と思われる方も多いと思うので、私の独断で全26冊(2024年2月 更新)を厳選して紹介いたします。
この記事の目次
渋沢栄一の事ならとりあえず「渋沢史料館」や「作家 守屋淳先生」へ
私が渋沢栄一に興味を抱いて最初に手に取った本は、定番とも言える「論語と算盤(角川ソフィア版)」でした。しかし多くの人が抱える問題として、漢文調で少々読み難いかな~という点があります。
… もちろん私もその一人だったので、以前に北区王子にある「渋沢史料館」で開催されていた『論語と算盤 読書会(当時は9月~翌年7月までの全11回, 対面式)』に参加させていただきました。
※募集告知や内容は公式HPやfacebookなどでご確認ください。
こちらで毎月講師を務めてくださっていたのが、ベストセラー『現代語訳 論語と算盤(ちくま新書版)』の著者でもある守屋淳(もりやあつし)先生でした。
(当時の読書会は)初回に「渋沢史料館」の見学があり、以降の十回で、毎月一章ずつ(「論語と算盤」は全十章)参加者各々が取り上げたい箇所を持ち寄って、グループごとに話し合うという形式でした。
守屋先生がグループを巡回しているので、質問にはその場で回答してもらったり、読書会最後の数分を用いて当日の章についてプチ講義もしていただけます。それに加え、毎回守屋先生から次回分のレジュメや解説が配布されるので、ちゃんと理解したいと集まった人たちには、嬉しい内容なんですよね。
… この読書会は2011年からはじまったと聞きました。現代語訳の「ちくま新書版」の初版が2010年なので、そのタイミングもあったのかな~と推察されます。
こちらの渋沢史料館は、「渋沢栄一記念財団」が運営母体です。迷った際には、渋沢史料館や守屋先生の著作などからチェックするのが良いかと思いますよ。
渋沢栄一の関連図書まとめ(その1)と「論語」「孟子」
このような経緯を踏まえて、私は昨今の渋沢栄一の関連図書を整理してみようと思い立ちました(その1, その2)。
※前述の守屋先生の書籍から派生した相関図として、下記をご覧ください。
表のヨコ並び欄にある
- ①論語と算盤
- ②雨夜譚
- ③渋沢百訓
④論語講義- ➄論語
- ⑥孟子
こちらの①~④が、渋沢栄一の代表的な四冊かと思います。一般的に触れやすい点から、個人的に『渋沢四書』と呼んでいます。
※追記1(2024年2月)
④の「論語講義」を外して、デジタル版「実験論語処世談」と入れ替えます。(「論語講義」は「実験論語処世談」を元に筆述されたそうです。実は予定されていた渋沢栄一の校閲が、間に合わなくなったまま世に出ているとか。(情報資源センターさんの記事))
➄「論語」や⑥「孟子」は『孔孟の教え』として、渋沢栄一が人生の教訓としていたものですね。
そして、タテ並び欄には
- A. 角川ソフィア (文庫, ビギナーズ)
- B. 新書など (守屋淳, 守屋洋)
- C. 岩波文庫, 講談社学術文庫
と配置しました。「B. 新書など (守屋淳, 守屋洋) 」の欄をおススメしています。
… 前述したように、角川ソフィア版は全文かつ漢文調で旧漢字も含まれ、慣れるまで読みにくいのです。入口としては守屋先生のやわらかい現代語訳や、詳しい解説から入ると良いでしょう。
さらに2020年12月に『渋沢栄一 論語と算盤の思想入門』が出版されました。「現代語訳 論語と算盤」に加えた陣容が、さらにぶ厚くなっています。
読書会で配るレジュメやプチ講義で触れた内容なども加わり、まさに入門書として最適!な一冊です。
(「論語と算盤」についての特集記事)を別に作成したので、こちらもご参照ください)
➄「論語」の新書に関して、守屋淳先生の二冊の著作を掲載しましたが、⑥「孟子」については守屋洋先生(守屋淳先生の父, 中国文学者)の新書を掲載しました。どちらも副読的な解説本となっています。
残りのタテ並び欄の説明に戻ります。
「A. 角川ソフィア (文庫, ビギナーズ)」は文庫本で求めやすく、「渋沢四書」のうち三書をカバーしています。
角川ソフィア文庫は、①の「論語と算盤」はもちろん、②「雨夜譚(正式な読みは「あまよがたり」だが、親類は「うやたん」と呼んでいた)」も2020年秋に「渋沢栄一自伝」としてめでたく出版されました。
… こちらは自伝の体裁なので、NHK大河ドラマ『青天を衝け』の予習や復習としてもご活用いただけるかと思います。
③「渋沢百訓(しぶさわひゃっくん)」は、①の「論語と算盤」と同じような講演録です。「青淵百話(せいえんひゃくわ)」という底本からの抜粋版となっています。
重複も散見されますが、こちらにしか書かれていないエピソードも多く、ファンならゆくゆくは手に取りたい一冊ですね。
角川ソフィア文庫でもビギナーズクラシックの「➄論語」と「⑥孟子」は、『孔孟の教え』がやさしく解説された入門編なので、堅苦しいイメージが苦手な方にかなりおススメです。
「C. 岩波文庫」は、底本にもなるようなお固い本です。笑 漢文調に慣れてきたら、こちらもチャレンジしがいのある本となります。
渋沢史料館元館長・井上氏の著作
前述の図は守屋淳先生にフォーカスして作成しましたが、「渋沢史料館(元館長・井上氏)」の著作も紹介させていただきます。
こちらも2020年11月に出版された、比較的に新しい部類です。渋沢史料館の館長(当時)として「より正しい渋沢栄一像」を広く深く伝えようとした一冊になっています。
膨大な一次資料と様々な角度から
冒頭の「今、なぜ渋沢栄一なのか」というテーマに肉薄しながら、箸休めのこぼれ話も付いていて、読みごたえとして十分なものがあります。
①「論語と算盤」や②「雨夜譚」の補足資料にもなるので、こちらも本棚に揃えておきたいですね。
渋沢栄一の関連図書まとめ(その2)と「その他」「青天を衝け」
関連図書(その2)は、ヨコ軸の右端二列を⑦その他(漫画や小説)と⑧NHK大河ドラマ「青天を衝け」に入れ替えた図となります。
⑦「その他」は守屋淳先生が監修に入ったこども向けがあるのでそちらを紹介しています。
加えて、2021年3月にNHKで放送された「100分 de 名著『論語と算盤』(公式HP)」のテキストも分かりやすくて良かったですね。
※全4回の番組は、再放送を待つか有料のNHKオンデマンド(単品・税込み110円 / 回より)にて視聴可能となります。
渋沢栄一の小説は三種類ほど出ている記憶がありますが、私はフランス文学者である鹿島茂氏の「文春文庫版(上・下)」をおススメします。
フランス滞在中の渋沢栄一が見て学んだ経済政策である、「サン・シモン主義(富を生むカネ, モノ, ヒト, アイデアの循環)」の指摘など、氏の専門性が発揮されているびっしりとした筆致などが面白く感じられました。
最下段にある大型ムック本(A4サイズ)の「別冊太陽 渋沢栄一」は、同じく鹿島茂氏が監修を務めた一冊で、とにかくビジュアル&付随する本文が質量ともにホント大満足です。
北区王子の「渋沢史料館」や、出生地である埼玉県深谷市の「渋沢栄一記念館」などで展示されている資料や貴重な写真などが一覧できるので、かなりおススメです。
… やはり、ビジュアルがあると理解の度合いは違ってきますね。笑
ビジュアルと言えば、
⑧の2021年NHK大河ドラマ『青天を衝け』に関連して、NHK出版から公式ハンドブック, ムック本が相次いで発売されました。
『青天を衝け』のムック本に関しては、NHK出版の公式以外にも二種類程度あったようです。まずは公式から押さえておきましょう。
※追記2(2024年2月)
2021年は前述のNHK大河ドラマ『青天を衝け』が放送された年に当たります。この年は大河ドラマ館が北区王子, 深谷市の2か所で開催されるなど、イベント関係が多数開催されました。
中でも、大宮の埼玉県立歴史と民俗の博物館さんで開催された、特別展「青天を衝け~渋沢栄一のまなざし~」はかなり充実した展示だったようです。
実は、私は行けずじまいでした。涙 この特別展は大河ドラマの放送を記念に、渋沢栄一に関する資料が広く集められ展示されていました。2024年現在から見ても、かなり充実の内容です。
… まだこちらの図録(税込み1200円)が入手可能なので、通信販売などで入手しておきましょう。※直接ミュージアムショップで購入か、通信販売だと現金書留のみ対応ですが少々煩雑です。(購入方法・お問合せ先など)
【まとめ】渋沢栄一関連の厳選書籍は全26冊(2024年2月 現在)
私の独断でしたが…… 数えてみたら、守屋淳先生を軸に「図その1, その2」で24冊 + 渋沢史料館 1冊 + 図録1冊 = 合計26冊になっていました。
… オイオイ、結構多いじゃないか!! と思われるかもしれませんが、
- amazonで「渋沢栄一」を「すべて」カテゴリーで検索した結果は 954件(2021年1月末調べ)から、2000件以上へ(2024年2月)増加。
- 同じく「渋沢栄一」を「本」カテゴリーで検索した結果は 762件から、751件へ(同上)とやや減少。
というデータからも、(少ない方の後者で取っても)実に約3.5%まで絞り込んでいるので、私は「厳選」と言い切ってしまいます。今回は紹介できませんでしたが、渋沢家の親族(渋澤健氏, 渋沢秀雄氏, 鮫島純子氏など) の関連著作も多いです。興味がある方は、そこから当たるのも良いかもしれませんね。
それでは、意外と深い「渋沢栄一沼」にハマってみてください!笑