こんにちは、サイト管理人のヤツです。2023年から、新カテゴリー「ヤツの見解(opinion)」を新設いたします。

これまで書いてきた「①買い手(消費社会の変容)」と「②売り手(日本の商道徳)」を通して、サイトの主題である、「物を売り買いする」人の営みや文化を考えてみる!という趣旨です。
(①②やその他カテゴリーの終了宣言ではありません。今後もコンテンツを追加していきます。)

… 今回は「②売り手(日本の商道徳)」を総括した、私の見解をまとめてみます。

「売り手は(買い手に対して)何をしても良いのか?」

 2年前にUPしたエピローグ記事でも、「売り手は(買い手に対して)何をしても良いのか?またその線引きは?」と、投げかけていましたね。

売上や利益のためなら「(買い手に対して)何をしても良いのか?」って、難しい問題です。(違法な事は論外として)そんなの人それぞれだ論も一理ありそうですが、「お前の仕事スタイルは、汚い悪徳商法だな!」と言われたら、怒り出す人は多いはずです。笑


… だとすると「その線引きって、どこにあるんだろう?」と思って当然ですよね。どこかに、この微妙な線引きがあるはずでしょう。

その線引きについては、日本の文化に影響をおよぼしてきた、何かしらの宗教だろうと見当が付きます。中でも、私は儒教の根幹である『論語』の影響に注目しました。

孔子の肖像(出典:国立故宮博物院)
孔子の肖像
(出典:国立故宮博物院)

『論語(ろんご)』は現在から約2500年前に中国で活躍した聖人孔子(こうし)の言行録です。※『論語』の詳細はこちらの記事

これまで私はライフワークとして、日本の商道徳の系譜を辿ってきました。その結論として、『論語』はその背骨を形成していると捉えています。

孟子の『王道』と『覇道』で売り方を捉える

 それでは、その線引きについての説明に入りましょう。作図したこちらをご覧ください。

『王道』と『覇道』で売り方を捉える
☆『王道』と『覇道』で売り方を捉える
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向かって左側に「王道」と笑顔の商人、右側に「覇道」と悪だくみしてそうな商人を配置してあります。どちらが善か悪かは、一目瞭然ですよね?笑

… この「王道(おうどう)」と「覇道(はどう)」のアイデアは、『孟子(もうし)』の言葉から拝借しました。※『孟子』の詳細はこちらの記事に

孟子の肖像(出典:国立故宮博物院)
孟子の肖像
(出典:国立故宮博物院)

儒教では孔子を「聖人」、孟子を聖人に次ぐ者である「亜聖(あせい)」と位置付けています。当の孟子本人も、孔子の正当な系譜として後継者を自認していました。

そんな孟子は、「王道」「覇道」を下記のような意味合いで使っています。

◆ 孟子の「王道」「覇道」とは

・「表面だけは仁政にかこつけながら、ほんとうは武力で威圧するのが覇者である。」
・「身に着けた徳により仁政を行うのが王者である。」
(公孫丑章句上 / 3-3 より)

出典:『孟子(上) 小林勝人訳注』岩波文庫

孔子も孟子も、仁政(民衆に恵み深い政治)を理想に掲げる政治家志望の人でした。上記をご覧の通りで、「王道」「覇道」は政治の文脈で使用しています。

こちらの文脈を保ちつつ、「王道」「覇道」を現代のビジネスや仕事に流用したという訳ですね。
(日本の商道徳の系譜では、他に三井孝房や倉本長治らも使用している言葉です。)

【大発見】「王道」が先か?「覇道」が先か?

 先ほどの図で「王道」の下に、5つのキーワードをぶら下げてあります。こちらから説明を加えましょう。

【王道】5つのキーワード

  • 徳や仁
  • (で)与える
  • 相手の都合から
  • 三方よし
  • 善悪で判断

作図を進める上で、先ずは「王道」から着手した事を覚えています。

5つのキーワードについては、日本の商道徳関連でそれっぽい言葉を選定してみました。この中でも、シンプルで分かりやすい推しワードは相手の都合からです。


次に、この「王道」と対比させた5つのキーワードを設定すると、「覇道」の完成です。

【覇道】5つのキーワード

  • 悪知恵や強引さ
  • (で)奪う
  • 自分の都合から
  • 自分のみよし
  • 損得で判断

先ほどの「相手の都合から」に対比させた、自分の都合からも大事なキーワードとなります。


… 実はここで私の脳内で何かがスパークしました。笑 

よくよく考えてみると、日本の商道徳を代表する各時代のカリスマは、この「覇道」を目の当たりにしてから「王道」を提唱しています。

これは私の中で、大きな発見となりました。

『王道』と『覇道』で売り方を捉える(覇道のみ)
先に現れるのが「覇道」
※クリックで拡大


「王道」と「覇道」は、最初から並び立つ図式ではありません。また、「王道」が先に現れたわけでもありません。

欲望のまま好き放題する「覇道」があり、それを見かねた先人が「王道」を提唱する …という図式なんですよ。

その見かねた先人こそが、日本の商道徳を代表する各時代のカリスマです。次の記事で紹介しますが、ここでは代表的なカリスマとして、石田梅岩, 渋沢栄一, 倉本長治の名前だけを挙げておきましょう。


江戸時代から昭和へと、生きた時代も違うこの3名の共通項は、もちろん『論語』です。仏教やキリスト教などの影響も多少散見されますが、儒教の根幹である『論語』の影響はかなり強いものがあります。

『王道』と『覇道』で売り方を捉える
☆『王道』と『覇道』で売り方を捉える(再掲)


私が選定した「王道」の5つのキーワードに、『論語』のエッセンスが詰まっていたのは自然の成り行きだったようですね。

そして「売り手は(買い手に対して)何をしても良いのか?またその線引きは?」という問いに対しても、『論語』で線引きしても違和感がありません

…『論語』は、まさに日本の商道徳の背骨そのものでした。

今回の「ヤツの見解」まとめ

 サイト開設から2年経ったので、新コーナー「ヤツの見解」を設けてみました。目安は3000~5000字前後にして、今後は私の見解を書いていこうかなと思っています。


今回は「②売り手(日本の商道徳)」を総括した話なんですけど、私は売り手が何をしても良いって風潮が本当に苦手なんですよ。苦笑

私も以前はSP(セールスプロモーション, 販売促進)に関わっていました。

これらの商道徳の話って、業界の中でもよく「キレイゴト」で済まされがちでしたけど、まぁこれではイカンよなと強く思っていた次第です。

… 誰か暇な人がこの辺りを掘り下げておかないと、次世代のかしこい人たちに後ろ指刺されるでしょうね。間違いなく


というわけで、
私にもちょっとした使命感が芽生えているので、これからも発信を続けていく所存であります。